5.

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 その後、相槌だけを繰り返していたが、「……すぐにレシピエントを連れていきます」と言うとPHSをポケットへしまい、席を立った。  レシピエント――確か、臓器提供を受ける患者のことだ。  俺も弾かれるように席を立つと、佐伯さんは微笑した。 「あなたは希空さんの運命の人かもしれません。 ドナーが見つかりました」  それからはあっという間に事が進んでいった。  ドナーが見つかったと報告を受けた結城希空は動揺していたものの俺が「諦めなくてよかっただろ?」と言うと、少し緊張した面持ちで「うん」と頷いた。 「手術が無事に済んだら……また会ってくれる?」 「会いに行くよ。必ず」  必ず。  俺たちは、いつかのように小指をほんの少しだけ触れさせた。  T大学医学部附属病院へ運ばれた結城希空を手術室の前まで見送った。  そこで初めて結城希空の母親に会うことが出来た。父親に似ているのだろうか。母親には似ていないような気がしたが、どことなく雰囲気は似ていた。  家族ではない俺が、ここにいるわけにはいかなかったから外来の診察時間が終わる時間まで、ただただ手術の成功を祈った。  外はむせかえるような熱気と、蝉の鳴き声に包まれていた。  病院の空調で冷えた肌が体温を急速に取り戻していく。     
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