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 T大学医学部附属病院。  俺は海奏を家に残し、人生で初めて乗るベンツでここまで来た。  正直、乗り心地なんて覚えていない。寧ろ生きた心地がしなかった。  車から降りると傘もささず、“心臓外科”と印字されたプレートを目指し、出来るだけ走らないように心掛け受付けに向かったはずだが、看護師に「走らないでください」と注意を受けた。 「あの……結城希空さんは……!」  焦る俺とは反対に事務員は冷静にリストを確認し「少々お待ちください」と短く言うと、どこかへ電話をかけた。 「お名前は」 「あ、三浦です。三浦陸」 「はい。三浦陸さんです。……はい、ではお通しします」  電話を切ると事務員は席を立ち「ご案内します」と俺の前を歩き出した。 「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。もう処置は済んで落ち着いてるみたいですから」  外来のある建物から入院施設のある建物に移ると事務員が言った言葉に大きく息を吐いた。  途中、エレベーターに乗り、14階まで登った。  どこまでも白い壁と天井、そして床に結城希空の姿が重なった。  彼女は出会った時から白だった。     
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