差し出しのないチョコレート

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俺は急いで家に帰った。 「ただいま~。」 「お帰り~。」 母が返事をしてくれたが、俺はそれを聞きもせず2階への階段をかけあがり自分の部屋へ入った。 制服を脱ぎ捨て私服に着替え、鞄からチョコを取り出した。 チョコを入れた箱は綺麗にラッピングされている。 俺はそれを恐る恐るほどき、ふたを開けた。 すると中にはもちろんのことながらチョコが入っていた。 一口で食べられるサイズのチョコが数個。 俺は胸が高鳴った。 人生で初めて女性から貰ったチョコ。 どうだ、世のリア充ども。 俺だってその気になればチョコの1つや2つもらえるんだ。 しかし、一体誰がチョコをくれたんだろうか。 俺が本を読んでいることを知っているってことはクラスのやつか。 しかし、あのクラスに俺を好きな女がいるとは思えない。 …まぁ良い。 こうしてチョコが貰えたんだ。 考えるのはあとだ。 今は目の前のチョコを食べることにしよう。 俺はチョコをひとつ手に取り、口に放り込んだ。 口の中に甘い香りが広がっていく。
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