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鐘が鳴り続けている。
テレビは歌番組が終わり、どこか遠いところの神社の様子が流れ始めた。年が明けるのを待つ人々が列を作り、甘酒を配る屋台の明かりやスマホの明かりが、灯篭のように、四闇に浮いている。
僕と彼女は、画面越しのその様子を寄り添いながら眺めた。
あのときもちょうどこの位置で、こんな風にテレビを見ていた。でも僕はそれをあえて口にしなかった。
また、鐘が鳴った。
「百回目だ」彼女が呟く。
「数えていたの?」
「うん」
彼女は両手で、みかんを優しく包み込んだ。
あと七回で、今年が終わる。
最後の一回で、次の年が始まる。
「ねえ」僕は彼女に尋ねた。
「次はいつ、会えるの」
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