3. こたつの中に二人は暖まる。

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うどんを食べている、その時、後輩が 「雪姉、足」 と呟いた。 「足が、どうしたの?」 「当たってるよ、俺に」 「わざと」 一瞬で後輩の……彼の顔がまた赤色に染まった。 うどんを食べ終えた彼が言う。 「雪姉」 「何?」 「今日はありがとう。美味しかったよ、鍋。来て良かった」 「ありがとう。こっちも、楽しかったよ、色んな話が出来て」 「それで……あの……雪姉は、また勝手に引っ越したり……しない……よな?」 「ん……またアンタが来てくれるなら、かな」 「それじゃあ」 彼は依然赤いままの顔をこちらに見せる。 「それじゃあ、また来るから」 そう言った彼は、またすぐに俯いてしまう。 「うん……楽しみにしてる。待ってるから」 彼はこたつから出る。彼はこたつの効果か、前より棘が無くなった……前からそこまで棘があった感じはしないが、それでもそんな気がする。 カバンを取った彼は玄関に向かう。それを見た私もこたつから出て、見送りに向かう。 「じゃあね」 「う、うん。また来るよ、雪姉」 マンションのドアを開けて、久しぶりに感じた冷たい風が私の体を撫ぜる。 「きっと来るって、信じてるから」 「うん。俺も、雪姉が勝手に引っ越さないって信じるよ」 「何よその言い方~」 「いいだろ、別に」 それから二人で小声で笑い合った。 「それじゃあね、雪姉」 「うん」 二人で手を振って、その後ドアを閉めた。 閉めたドアのレンズに、全てを見られたような、そんな気がした。
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