1. こたつ無しじゃ生きていけない。

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私の家は小さなマンションの、小さな一部屋だ。高校生になってから、親に懇願して一人暮らしを始めることにした。初めは両親ともに大反対だったが、もう独り立ちの時期と考えたのか、はたまたもう面倒くさくなったのか、最終的にはOKサインが出た。それからというものの、毎月5万円とお米一袋の仕送りを受けながら、細々と駅前の居酒屋でバイトをして生活費を賄っている。(因みに学費や保険料は親が持ってくれている。でないと私は女子高生にして借金をする、世にも珍しい奴になってしまう。) 自分の部屋に急ぎ、秒で鍵を回し開ける。もうもはや神業と言って良い程のスピードで。……少し急ぎ過ぎ、だろうか。でも別にいい。 見慣れた部屋をぐるりと見回す。家にあるものは大体実家から持ち出したものだ。特に壁紙なんかを貼る訳でもなく、質素でのっぺりとした白い壁が私の部屋を囲んでいる。女子らしくないのだ。 こたつは重いだろうから、宅配BOXに入っているのを願う。再配達だけはやめてくれ。早く暖まりたいんだ。 荷物を置き、同じ格好のまま外に出て、緊張と興奮を抑えながら下の階の宅配BOXに向かう。 一階の管理人室横、その場所に滑り込む。 BOXの機械に部屋番号を2、0、7、と打ち込んだ。 機械は照会を終え、電子音声をBOXROOM中に響かせた。 「そりゃそっか……」 結果、宅配BOXに目当ての物は届いていなかった。まあまず、自称か弱い女子高生一人でこたつをどうやって二階まで運べと言うのか。その時点で薄々分かっていたのだが……。 隣接する郵便受けを覗くと、再配達票が入っていた。現実はそう甘くないよ、と紙きれに諭された気がした。 配達会社に電話を入れて、今日の夜までに届けて貰うようにした。でないと私は死んでしまう。主に寒さで。
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