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徐に部屋で夕飯の事を考え出す。
今日はさっきから言っているように死ぬ程寒いので、温かいものが食べたい。温かいものといっても、一概には言えず、シチュー、麺類とか、ピザや鉄板焼きなんかも温かい。
……というか料理って大概あったかいんだな。
いやでも、こんな寒い日は鍋物が食べたい。ダシの効いたスープが、白菜のしなっとしたところに染み込んで、噛み締めると口の中がスープに溢れる……想像しただけで腹が減る。ああ白菜食いたい。
決めた。今日は白菜と豚挽肉のミルフィーユ煮込みにしよう。
……いや待て。
鍋物を一人寂しくつつくっていうのも悲しい話だ。まあ、そんなことは承知で一人暮らしを始めた訳だが。でも、やっぱり心のどこかで寂しさが音を上げている。
……。
携帯のアドレス帳からひとりの名前を見つける。
ピッ、ピッ、……
『はい山井です』
「 やあやあ山井後輩。久しぶりであるな」
『あぁ……?ああ、雪姉か……。何だよその口調……』
「何だよぉ~その態度~私たち仲良いでしょ~」
『急に媚びんな……で、久しぶりなのは認めるけど、用件は何?』
「今から私の家、来れる?」
『えぇ……いやだってうちもうすぐご飯なんだけど』
「だったら親に言ってよ。『籠原さん家に呼ばれました 』ってさ」
『うっ……』
「おやおや……?抵抗はもうおしまいかな?」
『……分かったっ!分かったからっ!行くよ行けばいいんだろっ!』
「そうそうそれでいいの。それじゃ、住所教えるから」
『え……?いや教えるも何も俺雪姉の家の住所知ってるよ?』
「あぁあぁ、言ってなかったっけか。私引っ越したんだよ」
『えぇ!?聞いてねぇよそんなこと!何で教えてくんなかったの?』
「私も家族も忙しいんだよ。それじゃ言うからメモってね~。えと……埼玉県……」
『ちょ、待ってよ……』
「OK?じゃ、30分以内に来ること。分かった?」
『さ、さんじゅっぷん!?無理でしょ!こっから快速でも最寄り駅まで25分はかかるんだよ?』
「男ならなんとかしなさいっ!」
『ウッソだろ……分かったよ!もう出る!』
「ほーい。じゃあ待ってるよん」
一通り会話が終わった。昔から可愛がっている一つ年下の中三の男の子だ。なぜこの子にしたのかと言えば、まあ私が友達が少ないからというのもあるが、それ以前にこの子と久し振りにいろんなことについて語りたいな……と思っていたのだ。 何を語るかは……分からない。
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