0人が本棚に入れています
本棚に追加
あと1分。それが彼、山井 涼生に残された時間だ。
私は家でのんびりと、じっくりと待っている。
ーーーやっぱり、ちょっと無理があったか。
そう思って、そろそろ到着するであろう配達員を迎える準備をする。後輩よりもこたつが楽しみなのだが、それは彼には内緒だ。
寒いが外へ様子を見に行ってみるか……。
と思っていた矢先。
『ピンポーーーン』
というチャイムがけたたましい音を響かせて耳に届いた。
驚いて反射的にドアを開ける。
「はぁ、はぁ、はぁーーー…………よ、よう、雪姉。ホント、久しぶりだな」
そこには件の後輩が肩を上下させてこちらを向いて立っていた。
「おお、ホントに来た。間に合ったんだ」
「自転車ギア全開にして漕いで来たから……はぁ……」
「ん……まあとりあえず上がりなよ。疲れてんでしょ?」
「……じゃあ。お邪魔します」
少し躊躇ったような気もしたが、まあ、気のせいか、照れてるのか。
後輩は部屋の方へと廊下を進んでいく。
「あれ?今雪姉一人?」
と、彼はこちらを振り返って問うた。
「ああ、言ってなかったっけ。私、今年から……あ、いや、年越したから去年からか。一人暮らし始めたんだよ」
「……え?」
目の前の後輩は鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしている。
「どうしたの?一人暮らしって意味分かる?ニホンゴダイジョウブデスカ?」
「大丈夫だよ!……っていうか大丈夫だから驚いてるんじゃんか!一人暮らし?雪姉が?嘘だろ?聞いてない!」
「言ってないもん」
「なんで言わないんだよ!引っ越すとか一人暮らしするとか、別に言ってくれてもいいだろっ?」
「いやー……だって私もう高校生だし。プライバシーの観点から見て、ね?あんた男子中学生なんだから、現役女子高生の生活事情なんて教えられないよ」
「なんで自分からちょっとアヤシイ感じに言うんだよ……」
「ん?別に怪しいことは言ってないよ?頭の中でそんなこと考えてるのはどっちかなー?」
「う、うるさい!雪姉のそんな姿、想像したくもないよ!」
「そんなってどんな?」
「……負けました。すいません許してくださいなんでもしますから!」
「ん?いまなんでもすると言ったな?んー……それじゃあ……今日は一緒に語り合おう後輩よ。鍋でも食べてあったまりながら、ね?」
「え?鍋?語るって……何を?」
「うるさい。問答無用!それじゃあ……ちょっと待ってて」
最初のコメントを投稿しよう!