179人が本棚に入れています
本棚に追加
大学4年の梅雨入り前、早い段階で就活は終わった。
というのも、ラッキーな事に、トントン拍子で内定を貰うことが出来たのだ。
春から勤めるIT関連の会社は、ここ数年で波に乗り、業績を上げていた。
別に憧れていた職でも、どうしてもやってみたい事でもなかった。
ただ、人生の流れの中で、卒業して就職する、それが当たり前なんだと思っていた。
安心しきっていたところに、落とし穴は用意されていた。
寝耳に水、青天の霹靂。
点けっぱなしのテレビからニュースが流れてくる。聞き覚えのある会社名、聞き間違いかと思い、画面を見た。
信じられなくて、電話をかけてみたが、既に電話は繋がらなくなっていた。
「…嘘だろ…?」
呆然として、座り込んだ。
内定取り消しの連絡も何もないまま、その会社は倒産して、俺は周りに出遅れる形で、再度就活をする事になった。
世間は夏休み、照りつける太陽は肌を刺し、じっとりと暑い、蝉のうるさい夏の事だった。
最初のコメントを投稿しよう!