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とにかく、就職する、それが目的になっていて、その先の事は二の次になっていた。 履き違えた思いで決まった就職先は、結局長くは続かなかった。 勤めて半年も持たずに退職したが、次に何をするのかも決めていなかった。 実家暮らしだから住む場所には困らないけれど、いわゆるニートと呼ばれる立場は肩身も狭く、家族の視線も冷たい。 居心地の悪い家の中から逃げるように外に出た。 暦の上では秋。10月の空はまるで夏のようだった。 コンビニに入って涼みながら、何気なくアルバイト情報誌を手に取った。パラパラとページをめくり、探すべきは就職先でバイトじゃない、と思い直しラックに戻した。 ご機嫌とりじゃないけれど、ファミリーサイズのアイスを買って家に戻った。 共働きの両親は既に出掛けている。 冷凍庫にアイスをしまうと、自室に戻ってエアコンのスイッチを入れた。
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