§2

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ようやく雪も根付いて、本格的なシーズンが始まった。 俺が配属されたのは、索道いわゆるリフト係だ。 山頂まで一気に上るゴンドラの他に、4人乗り、2人乗りの高速リフトが、斜面を縫うように並んでいる。 単調な作業でありながら、気は抜けない。 誰もが上手くリフトの乗降が出来るわけではないし、安全バーがあるとはいえ、危険な座り方をされたのでは意味がない。 常に目を光らせながら、笑顔を絶やさない。 「いってらっしゃーい」と見送り「足元気を付けてくださいねー」と迎える。 そんな中、シーズン頭から来ていた、それだけの理由でリーダーに任命され、バイトでありながら、社員同様の責任を背負う事になった。 スキー場でバイトをする奴等の目的なんてひとつだ。 滑りたい! 休日、ナイター、休憩時間、隙を見つけては滑りに行く。 当初は俺もそのつもりでいたのだか、なんとなく、そんな気分にならない。 理由ならわかってる。 プライベートまで、あいつと顔を会わせたくなかったのだ。
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