バーにて

1/3
141人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

バーにて

後輩に呼び出された刺青さん バーのカウンターに腰掛けていると、後輩のカノジョが現れる。 「あ」 2人して目を合わせて一言。 「え、あれ、お前アイツの」 「あ、はい、あの、お付き合いさせてもらってます……。あの、先輩、ですよね?」 「先輩……先輩っていうかなんていうかだけど、うん、まぁ。なに、アイツと待ち合わせ?」 「ああ、はい、呼び出されたんですけど、まだ来てないみたいで」 「俺もアイツに呼び出されたんだよ、なんで言い出しっぺがいねぇんだよ。ったく」 ビールを2人分注文する。 「とりあえず飲んで待ってよう、来たら奢らそう」 「あ、はい、ありがとうございます」 隣に座ってかしこまるカノジョ。 少しの沈黙の後、ビールが届いたのを機に軽く乾杯する。 「あ、注文しといてアレだけど、ビールいける?」 「えっ?」 「あれだろ、最近の子ってあんまビール飲まないんだろ?」 「あ、いえ、大丈夫です、飲み過ぎなきゃ」 「ふうん、じゃよかった」 ツマミも適当に注文する。 「アイツとは、まぁうまくやってるんだな、その分だと」 「あ、はい。なんとか」 「ならよかった。カノジョ前に言うことじゃないと思うけど、アイツ本当不器用だろ」 「うん、ですね。ホント不器用です」 「ガキっていうか大型犬みたいな感じっていうか」 「あはは、大型犬! その例え当たってますね!」 「だろー? すげぇ構ってほしくてしょうがない大型犬みたいな」 「当たってるー、すげぇ」 「ここで飲んでる時もすげぇうるせぇもん」 「どんな感じなんですか?」 「もー、ホント一言一言うるさい。声でかいし態度でかいし。知らない奴ともすぐ友達になる」 「大学にいる時もあんま変わんないですよ」 「あいつ大学でもうるせぇのかよ、信じらんねぇ」 届いたツマミのハムの盛り合わせとフライドポテトをつまみながら、カノジョにも食べるようにすすめる刺青さん。 「あ、ご馳走になります。ありがとうございます」 「ちゃんとしてるなー、あいつに爪の垢煎じて飲ませてやりてぇ」 「いや、普通ですって」 「その普通をやらねぇんだってあいつ」 「きっと先輩に甘えてるんだと思います」 「だとしたら全然嬉しくねぇな」 「あははっ!」 ビールを飲んで一息つく。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!