510人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
眠ってもそばにいて
今夜は泊まっていくだろうと聞けば一瞬だけど躊躇った隼人。
ここに泊まるのが嫌とか、俺と一緒にいるのが嫌だというわけではないと思いたい。
「…泊まってもいんですか?」
その言葉の意図はなんなんだろう。
ここに泊める相手なんて隼人しかいやしない。他の誰を泊めることなんてないし、遠慮をする必要もない。
そう思っている。思っているだけではいけないと気持ちを落ち着かせて隼人の顔色を伺う。
「ここに泊めるのは隼人だけだ。それにここは俺達が過ごす家だからな。遠慮は要らないよ」
抱きしめれば身体を預けてくれる愛おしい隼人は今何を考えているんだろう。
俺から離れないと言った。その言葉はずっと有効であってほしい。
「愛してるよ。隼人」
情けない俺はこんな言葉でしか隼人を繋ぎ止める術を知らない。
離れていた間、どれだけ隼人を想い抱きしめる日を思い描いていたか。この現実を大切にしないといけない。
「僕も…愛してます」
そんな嬉しい言葉を胸の中で返してくれる。
片時も離れたくない俺は、手を繋いだまま部屋を動き回る。何も言わず握られたままついてきてくれる隼人が愛おしくてならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!