第一章 手巻き寿司

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ピーンポーーン 「はぁーい、どっちらさまでーす...か」 「 .....」 「なんだ、琉生か。」 「...なんだってなんだよ、サト。」  インターホンの合図で一軒家から出てきたのは、佐都中サト。  この家の次女である。 「なんだってなんだよってなんだよ。」 「もう、今日は時間がないんだよ...お願いがあってきたんだ。」  琉生が真剣な顔で...真剣というよりは切羽詰まったような顔でお願いがある、と言ってきた。めずらしい。 「聞いてあげるわよ。なに?」 「この子を、預かっていてほしいんだ。僕が迎えに来るまで、家から出さないで。」  そう言って、塀の影から出てきたのは同い年くらいの女の子だった。 「この子を?いいけど、なんで?」  サトの家は基本的に奔放だ。一人くらい人が居てもなにも言われないだろう。 「細かい話をしてる時間がないんだよ...」  琉生がそう言いながら女の子の背中を押し、サトの方にやった。  それから、A4位の紙を4つ折りにしたものをサトに手渡した。 「ここに書いてあるから、お願い。」  そう言うと、琉生はサトの返事も待たずに走っていってしまった。 「はぁ?おい!琉生!せめて紹介してから行けよ!!」  サトは名前もわからない女の子と二人残されてしまった。 「...あー、もう。わかったよ。で、君。名前は?」  サトはやれやれといった風に家の中に帰りながらたずねた。 「....ぇ-、ぁい」 「アイ?アイっていうのか。ふーん、」 「........ 」  女の子が小さく呟いた声にサトは気づかなかった。 「私はサトね。よろしく。」  サトはよろしくと言って右手を差し出した。 「......」  アイは、じっとその手を見つめるだけで握手には応じなかった。 「なによ、握手知らないの?こうするのよ」  そう言いながらアイの右手をつかみ、もう一度、笑顔で「よろしく」と言った。  数秒後、手を離したらアイは自身の右手をじっと見つめ、 「...よ、ろしく」  と言った。 「うん、よろしく。あ、ごはんは食べたの?琉生もこんな時間に来なくてもいいのにね。もう20時だよ。うちはご飯済ませたけど、アイちゃん食べてきたの?ご飯要らない?」  そのサトの親切な言葉に、アイはコクンと頷くだけだった。  その頷きをご飯要らない?の質問にたいしてのものだと思い、「食べてきたんだ」とだけ返し、アイを連れて自室に入った。
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