第1章

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 お天気のいいお休みの日、お父さんは僕を連れてパン屋さんに行ってくれる。 お父さんはパンを買って、コーヒーをもらって、僕を横に置いてテラスでパンを食べる。 お父さんは時々僕にもパンを分けてくれた。 散歩バックの中からチーズを出してくれることもあった。 僕はお休みの日が大好きだった。 お父さんは空気の僕に気が付いていなかったけれども、お父さんが向かっているのはやっぱりパン屋さんだった。 両脇が公団住宅の坂道を登って、学校の脇を曲がって、いつものパン屋さんに着いた。 お父さんはいつもの席に座ってコーヒーをすすりながら考え込んでいた。 お父さんは僕のことを考えていた。 言葉にもなんにも現れなかったけど、においでわかった。 においがなくたってきっと僕のことを考えていることがわかったと思う。 僕はお父さんの足元で丸くなった。 お父さんがコーヒーを飲み終わるまで待っているのが僕の仕事だから。 ふと見上げたお父さんの首筋の辺りにふわっとしたものが見えた気がした。 気のせいかなと思ったけど、じっとみているとまた何かがもそもそっと動くのが見えた。 やっぱり何かがそこにいた。 僕は立ち上がって、お父さんの背中をじっと見つめた。 「だから犬って嫌い」 それはお父さんの首筋に巻き付くように重なっていた。 体のほとんどがお父さんの中に埋まっていて、水面からのぞいているように首を持ち上げて、けだるそうに僕の方をみた。 それは白い猫だった。 「あたしは寝ているだけなんだから、ほっといてくれればいいのに」 猫は僕の方を見るでもなく、ひとりごとのように呟いてまたお父さんの背中に潜り込もうとした。 「君はだれなの?」 「私は猫よ。この人は私をりんと呼んでいたわ。 犬のあなたのことを暖炉と呼んでいたように」 「りんはそこで何をしているの?」 「決まってるでしょ。 私はここでこの人とひとつになっているの」 「ひとつになっているの?」 僕はその猫が何を言っているのかわからなかった。 そもそも猫と話をしたことがなかったし、そもそも言葉というのが解らないから、そもそも話というのをしたこともなかったので、なんで猫が言っていることがわかるのかも僕にはわからなかった。 とにかく、猫がそういったことが解ったということだけがはっきりとわかった。 「なんでひとつになっているの」
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