グランレン修練場創建局

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グランレン修練場創建局

       ―初登庁―    今日は週の始めの暁の日だ。 ルークは王城の南棟に渡って、グランレン修練場創建局の扉を叩いた。 女の声で(いら)えがあり、なかに入ると、正面奥の机にいるナイエス・クリステが微笑むのが見えた。 「おはようございます、ルーク様」 「おはよう、ナイエス。僕にも何か手伝えることない?」 そう言うと、ナイエスは目を見張り、それから笑って言った。 「とんでもないことです。ただ、手伝いではないですが、ルーク様には、創建局の居室でご自身でお使いになります手回りの品…文箱(ふばこ)や墨筆(すみふで)、屑入れなどが必要になるかと存じます。ご指示をいただければ用意しますが、もしかして、ご自身で選ばれたいのでは?」 ルークは目を煌めかせた。 「うん!選びたい!」 「では、今から創建局へいらっしゃいませんか?どのような仕上がりかご覧に入れたいのです」 「行く!でもいいの?まだ準備とか…」 「大丈夫です。移動の前に確認しなければなりませんので。それでは早速…馬車を用意しております」 「うん!あ、スー。親衛隊のみんなに、創建局に馬車で行くって伝えて」 自分でもできるのだが、ルークはあまり伝達で風の力を使わない。 王である自分が直接やりとりするのでは、相手を萎縮させる場合があることを知っているためだ。 祭王親衛隊には直接でもいいかもしれないと思っているが、今はスーがいる。 命令系統を乱したくない。 ルークはスーとナイエスとその補佐であるウェルフラム・ヒョルテ…ウェルとともに、王城の車寄せから馬車に乗った。 5人の親衛隊の顔触れが馬で同行し、王城の真北に位置する表神殿の西、レゾン地区に向かう。 表神殿とは、アルシュファイド王国全土を覆う絶縁結界という強力な守りの術を形作るのに必要な(くさび)…要となる石が置いてある尖塔を設置してある場所だ。 表神殿にはこのほかの施設に、四の宮公が管理する四の宮がある。 四の宮とは、人の異能を判別し、サイジャクの使い方を教え、力の使い方を教える修練の場で、現在はサイジャクによる修練を行っている。 広い馬車道を通ってひとつの邸の前に着くと、ルークは最後に馬車を降りた。 ナイエスが少し心配そうにルークを見る。 「いかがでしょう、こちらが我らの創建局です」 ルークは目の前の建物を見上げた。
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