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―創建局第2棟―
「…ちょっと時間が空いたね。この間にカィンはアークの仕事するといいよ。僕は地図でも見てる」
第1棟に戻ると、そのように決め、カィンは祭王親衛隊居室の一角にある机で割り振られた仕事をした。
ルークは同じ部屋で、親衛隊が揃えた地図のうち、レグノリア区の立体地図を見せてもらった。
そうして過ごしていると、すぐにナイエスが来て、こちらです、と案内した。
祭王居室と創建局局長執務室の間にある廊下の先の扉を開けると、すぐに外に出た。
階段を下りて小道を進むと、敷地の端に突き当たり、裏門をくぐれば、馬車がすれ違える程度の道を挟んで斜め先に、目指す第2棟があった。
その邸は淡黄蘗色で、印象としては第1棟に似ていた。
なかに入ると、ちょうど玄関広間を横切る者がいて、ナイエスが呼び止めた。
「クルート!紹介しなければならない方がおられます」
「ああ、ナイエス。今何か出かかっているんだ。あともうちょっと…」
「悪いけれどそれはひとまず置いておいて。こちらが、祭王陛下であらせられます」
「えっ、祭王…はっ、これはご無礼を!クルート・マレリアと申します」
クルートは深く深く頭を下げた。
ナイエスが言った。
「クルート、顔をあげてちょうだい。まだ紹介しなければならないのよ。ルーク様、クルートは術語調査担当官です。クルート、こちらは彩石騎士のおひとりでカィン・ロルト・クル・セスティオ様、こちらは同じく彩石騎士のおひとりでスー・ローゼルスタイン様、それから祭王親衛隊隊長のハウント・ハント、後ろにいるのは親衛隊です」
顔をあげて頷いていたクルートは、ナイエスを見た。
「本日は進捗をご覧に?」
「ええ、そんなところよ。メリッサはいる?」
「2階でまとめ中だ。しかし確か、ストラウトとハノラは外出中だ。火の修練場に行っている」
「仕方ないわ。他は全員いるのね?」
「そのはず…いや、王城にいるかも。判らない」
「では行ってみるわ。ありがとう」
「いいや。それでは失礼いたします、祭王陛下、カィン様、スー様、親衛隊の方々」
クルートが低めに頭を下げる。
ルークは、これからクルートがどこに行こうとしているのか気になったが、ナイエスのあとをついて2階にあがった。
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