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「きちんとひとつひとつ、どんな背景があって生まれたか、どんな状況を想定しているのか、言葉の選び方、呼吸の合わせ方、もっとあるかもしれません。その成り立ちを追求し、明らかにしなければならないと思うんです!」
レモが力説したが、ルークは首を捻って返した。
「それって術語研究になっちゃうんじゃ…」
「ですが!教育者が何も知らずに教えるなんて間違ってます!」
「つまり教育者にも教育が必要ってこと?」
「えっ?」
レモは勢いを止めて考えるようだった。
ルークは言った。
「確かに、何も知らないで言葉だけ教えられたら困るね。レモは、教育者のための教育を考えて。フラッドは、どの順序で教えたら覚えやすいか考えて。そしてふたりの考えを照らし合わせて、改めて、何をどう教えるか決めてみて。それじゃ解決しない?」
フラッドが言った。
「解決すると思います。それぞれ別の視点から術語を見るんですね」
「うん、そう。できそう?」
ルークはフラッドとレモを交互に見た。
フラッドが頷き、レモが恥ずかしそうに俯いた。
「はい…」
「レモ?大丈夫?」
「私、つい感情的になってしまって…あっ、祭王陛下にご無礼を働いてしまったのでは…」
青くなるレモに、ルークは笑ってみせた。
「ルークって呼んで。無礼なんかじゃないよ。2人で考えても解決しないときは来て。僕、しばらく異能制御技法調査室にいるから」
そう言って術語編纂室の入っている棚の向こうを覗くと、人がいる気配はなかった。
「隣はいないの?」
「はい。カナとトーディは王城に行くと言って出ました」
レモの答えに、ルークは少し悩むようだった。
「そう…術語編纂は王城にあった方がいいのかな…」
呟きに、レモが答えた。
「いいえ。私たちの都合ですが、隣で編纂されているものをもらって教育を考えています」
レモの視線を受けて、フラッドが言った。
「ええ。最新のまとめをもらえて、助かっています」
カィンが言った。
「こちらはこちらです。まず場所から、政王の政策とは別なのだと示す必要があるのではないでしょうか。いずれ、自力で編纂する能力を持つでしょう」
「ん。そうか、そうだね。それじゃあ、次、案内してくれる?」
そうして部屋を出て、次に向かったのは異能制御事故対応室。
こちらのホートン・キャットとニール・トーイも、先に言われていたように騎士だった。
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