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「ルーク様、こちらが術語編纂室の2人、カナ・ミリアとトーディ・レゾナです。カナ、トーディ、こちらが祭王陛下であらせられます」
ルークは立ち上がった。
「よろしくね。術語編纂作業は順調?」
カナが一礼して答えた。
「こちらこそよろしくお願いします。はい。王城書庫管理部調査室資料課によれば、術語の書き出し作業は順調で、まもなく終了するだろうということでした。あとは、術語開発室からどの程度の数の新たな術語が提示されるかによりますが、できるだけ早く教育室に回せるものを仕上げます」
ルークは驚いて目を丸くした。
「えっ、思ったより早い!」
「祭王陛下におかれましては、術語配布の範囲を取り決めるためにお急ぎであるとお聞きしました。王城書庫管理官が特に急がせたのです」
「ルークって呼んで。そっか、ほかにも急ぐことあるだろうに…」
ルークは王城書庫管理官マエステオ・ローダーゴード…テオの配慮に感謝した。
「ひとつひとつ片付けていくだけだと笑っていました。ところで、ルーク様。編纂作業に必要な巻黄石を仕入れに行きたいと思うのですが、よろしいでしょうか。王城書庫管理部にはあるのですが、やはりこちらはこちらで手に入れた方がよいと思うのです」
「かんこうせき?って何?」
「文字を転写できるサイセキです。編纂作業をするに当たり、必要なサイセキなのです」
「分かった。ナイエス、経理官に話を通しておいてくれる?」
「もちろんです。保管場所は、第1棟になるけれど、仕方ないわね。保安庁には彩石の保管場所も設置するようにさせるわ」
「ひとつお尋ねしてよろしいでしょうか」
トーディがルークを見て言った。
ルークは、もちろん、なんでも聞いて!と答えた。
「ルーク様におかれましては、編纂作業は毎年必要だとお考えでしょうか?」
「どういう意味?」
「はい。今回の編纂が終われば、新たな術語が生まれない限り、必要のなくなる作業だと思うのです。辞書などがそうなのですが、数年置いて編集し直し、出版しています。最初のうちは、毎年でも必要かもしれません。広く伝えれば、それだけ広く変換されて使われることでしょう。ですがいずれ、それも落ち着いて、辞書のように、編纂は数年置きでよくなるかもしれません」
トーディは息を継いで続けた。
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