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「その状況で、保安庁に組み込まれた場合、我々の仕事はとにかく新たな術語を集めて編纂するに止めるのか、既に発行した術語を使用状況に合わせて編集し直す作業もするのか、それとも、術語編纂室はなくなり、我々は王城書庫管理部に戻るべきなのか、戻れるのかなど…先のことが気になってしまったのです」
トーディはそこまで言って息をついた。
ルークはちょっと目を大きくして、それから口を開いた。
「うん。それはどの部署にも言えることだね。いつになるか判らないけど、状況は変わる。編纂作業が必要なくなるとは、考えてなかったよ。新たな術語は、生まれ続けるものだと思っていたから。でも、そうだね、出尽くす、ということはあるんだよね」
ルークは考えながら言った。
「編纂の必要がなくなりそうだったら、教えてくれる?そのときに改めて考えたい。どんな状況になるか判らないから。できるだけ君たちの希望は聞くから、王城書庫管理部に戻れるようにも、話しておくね」
「よろしくお願いします」
「うん。そっか、保安庁は編成し直さないといけないか…」
考え込む様子のルークに、カィンが言った。
「必ずしもそうとは限りません。でも、ほかの視点も必要かもしれませんね。何にせよ、修練場を動かしてみないことには、事態がどう動くか、判りません」
「うん、そうだね。でも確実に、執行部は変えなきゃいけない」
「建設官たちですね」
ナイエスが頷いた。
「元の職場に戻したらいいのかな」
「建設官は元々、建造師なんです。建造物を造るのが仕事で。今回の仕事に招いた、という形です」
「ほかは?」
ルークに聞かれ、ナイエスは答えた。
「借り受けました。いずれ戻すことを前提にしましたが、戻せないかもしれないとも言ってあります」
ルークは肩を落とした。
「ナイエスはちゃんとそこまで考えてたんだね…」
「皆を選んだときは、私自身、どうなるか判りませんでしたから。保安庁のお役目をいただいて感謝しております」
カィンが言った。
「まだ、修練場も出来上がっていません。今は目の前のことに集中した方がいいでしょう」
「うん…トーディ、教えてくれてありがとうね。取り敢えず今は編纂作業を頼むよ」
「とんでもないことでございます。精一杯、務めさせていただきます」
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