王国を形作る者

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「悪くはないが、時間はかからないのか」 ユラ-カグナの言葉に、アークは肩を落とした。 「かかるわ…」 昨日、一部の人に作って渡しただけでも、相当な時間がかかった。 「ひとつひとつ作ったからじゃない?一度に作って、分ければ、そんなに時間かからないかも。分けられるか判らないけど」 「やってみるわ!」 「僕もやるよ!アークを手伝ってくれた人たちだもん、僕にだって感謝の気持ちはある」 アークはルークを見て頬を染めて笑った。 「ありがと!」 「とんでもない」 そういうことで、政王執務室に戻り、早速ふたりで力を併せて彩玉を作った。 浴槽で割ると、心と体を癒すものだ。 ふたりの繋いだ両手の下に、一抱(ひとかか)えほどある彩玉が現れる。 ここまではいい。 「さて、うまく分かれるか…量は浴槽ひとつ分、昨日作った大きさだね」 小指の爪ほどの大きさだ。 「ええ!」 ふたりは彩玉に触れ、息を合わせる。 「分かれろ」 その瞬間、ばらばらと音がして、細かくなった彩玉が床に散らばった。 「箱!箱!」 探すが、この部屋にあるようなものではない。 ユラ-カグナが言った。 「荷持ちを呼ぶ。あちらになら箱はいくらでもある。食事の方はどうする」 「それも持つわ!黒檀塔の方にもお願い」 「分かった」 シィンが頷き、早速風の力を使い、声による伝達を飛ばす。 ユラ-カグナも部屋を出て、箱と料理を手配した。 「さて、問題は、これだけで足りるかってことだね」 ルークの言葉に、アークは、もうひとつ作ってもらっていい?と聞いた。 「もちろん!その前にこれ集めなくちゃ」 シィンが言った。 「俺がやる。…彩玉よ、集まれ」 言葉…術語により、自分の力に方向を持たせ、風の力で彩玉を残らず浮かせる。 異能は、そのように人の意思に従うものなのだ。 もちろん、本人が言葉の意味するところ、望む力の形を正確に思い描けない場合は、失敗もする。 「それじゃ、作ろうか。アーク」 ルークが手を差し出し、アークがその両手の上に手を乗せ、もう一度彩玉を作る。 そして分割。 「足りなかったら、また言ってね。夕方には戻るから」 そう言って、ルークは部屋を出た。 部屋には、アークとシィンと大量の彩玉が残された。 「さてと、私も仕事!」 ひと仕事終えて、アークは執務机に向かう。 今朝は特に気合が入る。 ボルファルカルトル国から正式な書状が届いたからだ。
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