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―道具集め―
パッセ通りは表神殿の北にある、北門前広場から4本延びる北通りのうちのひとつで、北西に向かっている。
ここは道具街と呼ばれ、文具はもちろん、休日に家の手入れなどするための休日木工の店や、庭仕事に使う道具、家具店、調理器具店、食器店など様々な道具が売られる店がある。
ルークと親衛隊の目当ては文具で、店に入ると、ルークはまず真っ先に、墨の入った墨筆のある区画に行った。
それから返信や長期使用を目的とした木製の伝達用文箱、便箋、様々な素材の封筒、黒炭石を中心に置いて作られた、字消しで消せる炭筆(すみふで)、字消し、定規などなど、目に付くもので必要と思われるものをひと揃い集め、屑入れとともに求めると、店の者はその屑入れのなかに入れられるものを入れて、袋詰めしてくれた。
「持ちましょう」
そう言う祭王親衛隊隊長ハウント・ハントに、ルークは笑顔で首を横に振った。
「ううん!持ちたいんだ!」
それから、スーやそのほかの親衛隊の面々が選ぶものを見て、足りないものを求める。
そうして一旦創建局に戻り、揃えた道具を机や床に配置した。
椅子に座ってひと息つくと、ルークは背もたれに体を預けて、改めて部屋のなかをぐるりと見回した。
落ち着いた雰囲気、どっしりとした安定感がありながら、正面の白い壁と南側に開いた大きな窓が部屋を明るくしてくれている。
黄みがかった白い床の中央には、毛足が短い、黒に近い茶色の絨毯が敷かれ、その四角い形を見ていて思い付いた。
この部屋には応接設備が必要だ。
アークの部屋には背の高い机もあるが、そこまで置けるほどの広さはない。
だが、今ちょうど絨毯のあるところに応接用の椅子と机を置いたら、報告ではない話を聞きやすい。
そのとき、扉が開いて、只今到着しました、とカィンが言った。
王城で仕事を割り振られてから来たので、一足遅くなったのだ。
「なんだかアークの執務室に似てますね」
「僕もそう思ってたとこ!」
ルークは立ち上がって、早速意見を聞いてみた。
「ところで、ねえ、どう思う?この真ん中に応接用の椅子と机を置きたいんだ!」
カィンは中央の絨毯を避けて立った。
「ああ、なるほど。いいですね。絨毯が暗いから、少し明るめの椅子にしては?雰囲気壊すかな」
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