0人が本棚に入れています
本棚に追加
目覚めると見たことのない場所にいた。
強い風が体を抜けていく。
「はーくしょん」
ぶらっと体を震わせて、下を覗く。
カラフルなネオンが賑やかに灯る。
「一体此処は何処なんだ」
目を凝らして俺の置かれた状況を確認する。
どうやら階段の踊り場の柵にもたれていた。
体の至る所に痛みが走る。
目覚める前俺が居た場所は・・・。
大学の講義に参加していた。
前園先生の「時空の広場」と題した宇宙科学的なことを必死に書き記していた。
僕がペンを止めて先生の話に聞き入っていた、あの話はなんだったか。
思考をまとめるためブツブツ呟いていると、
カツンと足音がした。
ハッと頭を上げると、黒いコートに身を包み頭からフードをすっぽり被っていた。
「やあ、やっぱり来たんだね」
聞いたことのある声?低くて冷たい声、男?
暗くて顔がよくわからないが、会ったことがあると、
直感が示す。
「誰だ、お前。ってか此処は何処なんだ。お前俺を知ってるのか?俺を元居た場所へ返せ、お前の知ってる事を洗いざらい話せ。お前は誰で、俺は、俺は誰なんだ?」
すっと人差し指が伸びて俺の口を塞いだ。
「静かに。大丈夫。僕は嬉しいんだよ、君がこの世界に来てくれて。これで僕は自由になれる」
ふふふ、ははははと笑い出す。
胸元から時計を取り出しかちゃりと開ける。
「おおっと、こんなに経つか。すまないね、僕は君とゆっくり話する時間がないんだ。もう、行かしてもらうよ」
じゃあ、と俺の肩をポンと叩く。
そして胸元に指を当て
「ニカラビ・マキト」
と、言いニヤリと笑った。
「おいっ、おい!ちょと待てよ。お前は誰だ!
まだ話は終わってないぞ!おい、何処いくんだ!待てよ、待ってくれ。何なんだよ、おいっ、おい!」
男はあばよと、2つの指を額に当て振る。
その時、フードがズレて少しだけ男の顔が現れた。
会ったことがある。
当たり前だ。
去った男の顔は俺そっくりなのだから。
最初のコメントを投稿しよう!