目覚めるとそこは屋外階段の踊場だった

1/3
前へ
/3ページ
次へ

目覚めるとそこは屋外階段の踊場だった

「うわあああっ!!」  あたりを見渡すと、高校の周りには渓谷に囲まれた見事な山村風景が広がっている。悪夢からは解放されたが、現実に引き戻されて落ち込む塁。  ここは海無し県の山奥にある万望高校水産科校舎。少子化の今は山村留学兼寮付きのフリースクール。本来、都会の野球強豪校で甲子園を目指していた塁とは縁のあるはずはなかった。  昨年夏、甲子園代表を駆けた決勝戦。大量リードで迎えた九回裏ワンアウト走者なし。万を辞して登板した天才一年生エース、川崎塁。  セオリー通りに抑えれば問題なし。晴れの本戦前のプチ御披露目と思われた。だが、予期せぬデッドボールから塁の投球は崩れだし、ゲリラ豪雨に襲われ前代未聞の大逆転。塁はチームでの居場所を完全に無くしただけでなく、トラウマから正確な投球が全くできなくなっていた。  これまで野球エリート教育一筋だった父親の一徹は「子育ての間違いを正さねば!」と、過疎地対策の移住募集に応じて脱サラ。放心状態でくっついてきた塁。 村に唯一の高校、万望高校水産科での生活が始まる。魚の世話や観察、実習の日々。生臭いし個人主義的なクラスで友達もできず適応できない……  唯一塁を気にかけてくれる寺の息子、渓太郎。野球部を作りたいとの誘いに、全校生徒100人の高校では勝つチームは難しいと断る。 ある時、寄せ集めチームでの親善試合が組まれる。相手は合宿中の他校陸上部。塁は渓太郎と投手の座を争うが、コントロールを指摘されしぶしぶキャッチャーに。山寺の住職とその友人という元メジャーリーガーも参戦。 試合はボロ負けだったが、塁は純粋に野球を楽しむ心を取り戻す。そして急拵えのチームの潜在能力に気づいた二人はもう一度野球をやり直すために野球部創部に動き出す。やがて、水産科総出で手作り感満載の野球部が誕生。 村に次々起こる事件を解決しながら塁はコントロールとメンタルを克服し投手として再成長していく。 そして迎えた夏の県予選。下馬評はキワモノとか記念参加とか散々。だが二戦を快勝し次の相手は塁の出身校。 塁と渓太郎は因縁の相手に勝ち、過去の自分を乗り越えられるのか!?
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加