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私は田んぼの脇のあぜ道を歩きながら、黒縁メガネをしっかりと持ち上げて、登校風景を眺めた。
前方で燿馬に置いていかれたちずが呆然としていた。
慌てて駆け寄っていくと、私に気付いたちずが泣きそうな顔をして言った。
「恵鈴!
どうしよう!
私、ようまに軽い女だって思われたみたい!」
「どういうこと?」
ちずから一通りの話を聞いて、私はムカついた。
好きだという一言の重みがわからないヤツ相手に、軽はずみな会話の流れで「好き」と言ってもピンと来ないのは常識じゃない?
・・・ん?
そっちじゃない、危ない、危ない。
ちずのせっかくの気持ちを無碍に扱った燿馬の冷たさが・・・。
あ、なんかもう疲れた。
面倒くさい。電池切れた。
「ドンマイ」とだけ言い残して、私はとぼとぼとした足取りで学校に向かって歩き出した。ちずがしょんぼりしながらついて来て、ずっとウジウジと燿馬のことを言っているけど、耳に入った言葉が意味を成さないまま消えていった。
「どうしたの?なんか、今日の恵鈴、ご機嫌斜めだね?」
「考え疲れだと思う。糖分が欲しい」
「わかる~」
ちずは歩くのが遅い私の歩調に合わせてついてきた。すると、また前方に今度は燿馬が女子に絡まれているところに遭遇した。
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