第2章 それは恋。きっと恋。

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200ページぐらいの文庫の中で、一度も元カレ=彼の固有名詞があっただろうか? 私は思い出すのも面倒になって、つい「元カレだよ」と答えた。 ちずはまたさらに目を大きく見開いて驚いていた。 そんなに驚くようなことは言ってないはずだ。 「元カレって?恵鈴、やだ!もう!!そんな人がいたの?」 私のじゃないよ、と言おうとしたのに、ちずは間を置かず次から次に喋って来る。 「その元カレとはどこまで行ったの?私も教えるから、恵鈴も教えてよ」 女子らしいノリでそんな風に言われると、私はもっと疲労を感じてきて。 ちずと一緒にいると、どうしようもなく疲れを感じることは昔からあった。 そんなこと知ってどうするんだろう?というような、個人的なことも平然と聞いてくる。 「私はね、実は・・・もうやることは一通りやっちゃったんだ」 女子高生が教室で弁当食べながらするような話じゃないだろうに。 なんでこんな意味のないカミングアウトを聞かなくちゃいけないんだろう? 「一通り?」 「そうだよ」 「へぇ・・・」 「で?恵鈴は?」 「それなら私もさっきから・・・」頭の中でずっと、あのディープな恋愛小説の官能シーンが映像化されてエンドレスで再生されてるよ。 言い終わらないうちに彼女の「ええぇぇぇ!!」という大声によってつぶされた。
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