第2章 それは恋。きっと恋。

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それは去年の夏。 中学三年生のときだ。 進路のことで色々と悩んでいた時期に、私達家族は温泉旅行に出かけた。日常から離れた方が良い考えが浮かびやすくなるというママの提案で、自宅から車で7時間もかけて出掛けた先は函館市だった。 幕末志士が新政府軍と戦ったという五稜郭を観光しているとき。 パパとママはまるで新婚旅行のカップルのようにいちゃつきはじめ、一緒に居たくないのか燿馬が勝手に単独行動を始めたから、私は少し離れながらもアイツについていったんだ。 展望台のタワーに登り、五芒星のカタチをした大きな公園を見渡す。 遠くに雪を被る山脈が見えたり、霞んでいたけれど北海道の地形がわかる海岸線がうっすらと観えて、すごく良い眺めだった。 燿馬の方から私に近付いてきて、言ったんだ。 「お前のことずっと守ってきたけど、これからどうする? もう俺に守られる年でもなくなっただろ・・・。 俺達、距離を置いた方が良いと思うんだよね。 お前はどう思う?」 言っている意味はわかる。 双子の兄が妹の世話から解放されたい、と言っているだけの話だと。 だけど私がこの時感じていたのは・・・。 ・・・勝手に涙が溢れ出した。 「え?なんで泣いてんの?」と、燿馬が驚いていた顔と、明らかに困っている態度。 追い打ちをかけるように胸がズキズキと痛んだ。
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