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小谷家にいたころは早朝と夕方に散歩をさせてくれていました。
俊平くんが朝の六時半に起き、ぼくを公園に連れていきます。俊平くんは朝が大の苦手で、たいがい、ぼくが先に目を覚まし、彼の顔をなめて起こしにいったものです。
小谷家に来て一年がたっていました。ぼくはもう立派な成犬でした。
俊平くんは中学生になりましたが、あいかわらず子供で、朝寝坊ばかりしていました。
あくびをかみころす俊平くんを引っぱり、ぼくは散歩に出かけます。河川敷の遊歩道では、川ぞいの桜が散り、青葉から木もれ日がきらめいていました。
俊平くんはサッカーボールを持っています。将来の夢はサッカー選手なんだそうです。彼がプロで活躍するころには、ぼくは高齢者です。
いつもの公園は、道路をわたった向かい側です。敷地を囲む木立のあいだから、すべり台やブランコが見えかくれします。
ぼくらはその公園に入りました。
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