原案

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原案

 目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。  足元には、自分が転がっている。  理解できない状況に思わず周りを見回して、それが見知った病院の階段だと言うことに気がついた。  父の見舞いで訪れていた病院。  いつもなら封鎖されている屋外階段の踊り場にうずくまるようにして転がっている自分自身。そして、それを見下ろす自分。  これはどういことなのだろう、と考えていたら、少女の声が耳に入った。 「──病院の、多分北階段の踊り場です。人が……、はい、はい、多分生きていると思います」  スマートフォンを片手に話す少女の目線は、明らかに僕を見ていた。  チラホラと集まってくる病人、見舞客、清掃員、看護師。そのどれもが僕のことには気が付かない──正しくは、みんな僕の足元に転がった僕を見ていた。  階下の柵の施錠が外され、担架を持った人たちが駆け上がってくる。 「あのっ……!」  何が起こっているのか、どういう状況なのか。足元にいる僕は何なのか。問おうと発した言葉も、伸ばした腕も、駆け上がってくる誰にも触れることはなかった。  僕はどうやら生霊というものになったらしい。  通報した彼女には僕が見えていて、言葉をかわすことも出来た。  僕とこの世の接点は、もはや彼女だけになってしまった。  家族には僕が見えない。意識の戻らない僕を心配して、母は父と僕の病室を毎日のように往復している。 「君は、あの子と話をすることもできるんだね」  彼女に憑いていた彼は、どことなく寂しそうにそう言った。  彼は死霊で、僕は生霊だと、そう説明してくれたのはその彼だった。 「僕は──生霊は、どうしたら自分の体に戻ることができるんですか」 「そうだね、俺が見てきた限りだと……死んだ誰かの願いを叶えること、かな?」  死霊と生霊と生者と、その三者をつなぐ何かがあるはずだと、彼は言った。
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