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「そーだ。この前一緒に歩いてるとこ見たんだけど……」
「え?」
「お前のじいちゃん、随分若ぇのな」
ギクッ。
「あ、あの日はたまたま、おじさんが来てくれて……!」
「ぷっ。なんだよそれ」
「じゃあ!」
あたしは逃げるように職員室へ向かった。
もー、ほんと嫌だわ。
矢野新ったら、全く油断できない。
……だけど何でだろう。
最悪だって、なんなのよって、そう思ってるはずなのに。
あたしの胸の中には、確かに安心感に似た感情が広がっていた。
「失礼しましたー」
結局、土田先生からのお話は、“補習”についてだった。
出席日数が少なすぎるから、夏休み中に1週間ほど学校へ行かなきゃなんないみたい。
にしても、早いなぁ……。
あと少しで夏休みなんて。
こうやって、変装しながら学校へ行くのも、もう何度目かな。
まなみんがいて、涼子ちんがいて、大好きな笑顔にホッと一息つける学校へ。
たまーに、ひやりとさせられることもあるし、苦手な勉強にはやっぱり慣れない部分もあるけれど。
それでも、忙しいお仕事の合間を縫って行く学校は、あたしの中では当たり前の、かけがえのない日常なんだ。
そして──。
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