198人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
『いーーやーー! 絶対、いやぁーーーっ!』
中学3年の夏。
なんの前触れもなく切り出された“その話”に、あたしはひどく声を荒らげた。
“あなたの通う高校はもう決まってます”?
しかも、修平(しゅうへい)とは別の学校ですってぇ?
そんなの、絶対ありえない!
『自分の進路くらい、自分で決めさせてよ!』
『悪いですが、これがウチの方針なので』
『修平と同じ高校じゃなきゃヤダ!』
『無理です。そもそも、あなたの頭脳では……』
頭脳では、なんなのよ?
『日野(ひの)っちの意地悪!』
ぷくっと頬を膨らませたあたしは、スーツ姿の彼を鋭く睨みつける。
しかし日野っちはというと、怯むどころか呆れた顔をして。
『はぁ……』
わざとらしく、盛大に溜め息をついてみせた。
むぅっ。
あたしだって負けないんだから!
『ケチ! わからず屋! 堅物メガネ星人!』
ポカポカと腕を殴りながら、不満をぶつける。
『あたしは兎月学園(とげつがくえん)に通うのー!』
『沙弥さ──』
『特進は無理でも、普通クラスならあたしだって通えるでしょ?』
『わがまま言わずに、言うことを聞いてください』
『フンッ』
誰が聞くもんですか!
最初のコメントを投稿しよう!