あたしの秘密

2/15
前へ
/273ページ
次へ
「宿題見せてー」 「はぁ? 自分でやれよ」 朝一番の教室。 色とりどりの会話が飛び交う、そんな中。 あたしはひとり、頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。 グラウンドのすぐ隣にある、真ん中より少し後ろの席に座って。 とっても静かに。 すました顔で。 だからきっと、誰も知らないだろう。 今あたしの心の中が──。 まだかなぁ……? もう来るかなぁ……? 早く会いたいよぉ~。 ──ほんとは、こんなにも騒がしいだなんて。 気を抜いたら完全アウト。 一気に顔の筋肉が緩んじゃう。 ──サァァ……。 その時急に風が吹いて、爽やかな緑を揺らした。 さわそわ、そわそわ。 落ち着きのないその様子は、あたしの心をそっくり映したみたい。 窓から視線を外すと、不意に黒板の右端の文字が目に入った。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加