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夜が明けても闘いは終わらなかった。日が昇り、落ちていっても終わらず、また朝がきても闘いは続いていた。
しかし、膠着状態が続いている訳ではなかった。薄皮を削ぐような太刀傷が二人の体中を徐々に覆っていく。そしてそんな中、微々たる差ではあるが、少しずつ一真が優位を広げていった。
「……ここまでのようですね」
全身を血で染めて地面に倒れ伏した一華が呟いた。一真はそんな彼女を見下ろしていた。
闘いが始まってから三度目の朝がやって来た時のことだった。
「……終わりか」
「もう少し喜んだらどうです。ずっと私に勝ちたいと願っていたのでしょう」
「勝利なんかじゃない、こんなの。俺もあんたも万全からは程遠い状態だった」
「……どうせ、あなたに救われなければ終わっていた命です。このまま衰えていくのを待っているよりもずっとましな使い方ですよ」
「……死ぬのか、やっぱり」
「そんな気がします。死ぬのは初めてですが……体の機能が低下していっているのを感じます」
血まみれの一華からはもう、かつて満ち溢れていた覇気の残滓しか感じられない。
「でも、悔いはありません。私の望みは叶いました」
「望み?」
「誰かと死力を尽くして闘うこと。その末に気持ちの良い敗北が待っていればなお良いですね。……ええ、あなたとの闘いは気持ちの良いものでした」
「勝手なことを言いやがって……残されるこっちの身にもなってくれ」
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