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幕間(裏)
一真のあてのない旅は、こうして始まった。
暗闇を抜けて光の先に到達すると、そこにはまた同じような世界が広がっている。
といっても、同じことと言えば人間が組織だって生活していることくらいで、文化などはまるで違っている場合が殆どだ。言葉が通じないことも珍しくない。
その旅の中で一真は、それまでの常識を覆すような者と幾度も出会った。
霊的な力を使って火や水や風を巻き起こす、翡翠色の瞳と銀色の髪を持った少女。
角や翼、およそ人とは思えない特徴をもち「悪魔」の異名を冠する女。
霧の深い山奥に住まう、齢100歳を越える仙人。
金属製の玉を打ち出す不思議な杖を扱う部隊と、その長。
手強い敵を倒すと、目の前にはまた例の黒い空間が現れる。「ここ」で倒すべき者は居なくなった、という合図だ。
その中を進んだ先にはやはり、命を賭して闘ねばならない程の敵が居る。
この刀が持ち主を強者と引き合わせるというのなら、一真が知る中で最も強い剣士……一華とも再び引き合わせてくれるのではないだろうか。そんなことを思いながら闘いを続け、その全てで勝利を収めていくうち、百年を越える時間が経過していた。
不思議なことに、肉体は時を止めたかのように若く瑞々しい状態を保っており、技術を磨けばその分だけ体は応えてくれた。
時には致命傷と思われる怪我を負うこともあったが、数日休めばたちどころに回復する。刀が帯びる魔の力によって生かされているようだった。
もう長い間、一真は一華のことを思い出していない。始めのうちは彼女のことを考えない期間が長引いていることを自覚していたが、ここ数十年はそれすら考えることもなくなっていた。
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