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どさり、と最後の賊の体が崩れ落ちて、静寂がやってくる。血の色に染まったこの空間にいるのは、少年と、その女の二人だけだ。
(信用してもいいのか、この女……?)
少年は身構え、不測の事態に備える。
何の前触れも無しに、女の姿が少年の目の前から消え失せる。直後、衝撃と激痛が少年の体を襲った。
女の爪先が少年の鳩尾を的確に捉えていた。
「か、は……」
腹を押さえて背を丸めると、振り下ろされた踵が後頭部に突き刺さる。
重たい衝撃が思考力を奪う。少年は地面を這いずるようにしてその場から離れる。それ以上の追撃はなかった。
目の前に抜き身の刀が転がっている。賊の誰かが持っていたものだろう。少年はそれを握りしめて立ち上がった。
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