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女は淡く微笑むと刀を構える。その刀身に、畏れおののく自分の顔が映ったような気がした。
少年は女を真似て刀を構えたまま、立ち尽くす。隙を作れば命はない……が、少年にはこれまで刀をまともに扱った経験がなかった。
「来ないのですか?」
「…………」
しばらくの間は、少年はその場で女の視線を受け止める。
「っ……!!」
少年は刀を女に投げつけると、背を向けて走り出した。
敵わない。このままでは死ぬ。
しかし囲まれているわけではない、たった一人が相手なら逃げ切ることも不可能ではないはずだ。
そんなことを思ったのもつかの間、少年は襟首を捕まえられ、顔面から地面に叩きつけられる。
「がぁぁっ……!」
世界が揺れ、意識が遠のいていく。
「立ちなさい」
平坦な、容赦のない物言いだった。
女はやはり地面に伏せた少年に追撃は加えず、静かに見下ろしている。
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