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「まだ戦えるでしょう。武器ならそこら中に転がっています」
立ち上がり、刀を拾う。しかしそれは女の手によって弾かれ、折られ、また少年の体に拳や蹴りが浴びせられる。
倒すことはできない。逃げられもしない。なのに相手は、命を奪う決定的な一撃は一向に与えてこない。
なぜだ。なんのためにこいつは、俺に攻撃を加え続ける?
地面を転がされる度に立ち上がる少年の頭には疑問が浮かぶ。
死んだ方が楽なんじゃないか。絶え間なく襲う痛みに苦しみながら、そんな空想が何度も頭をよぎった。
そのまま、長い時間が経過した。
繰り返される殴打によって顔中は腫れ上がり、体の節々には無数のアザが浮き上がっている。
(くそ……ちくしょう)
少年の瞳からは涙が流れだしていた。自分のどこから、どんな感情によってこれが溢れだしているのか、それは少年自身にも分からなかった。
朦朧とした意識の中、立ち上がって身動きできずにいると、強い衝撃が顎の辺りに走った。
限界だった。重なった疲労と負傷、そして絶望によって、地面を転がる少年の意識は制御を失い、闇の中へと落ちていった。
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