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原案(あらすじ)
目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
「ふぁ~…もう夕方か」
優斗はゆっくりと身を起こし、階段を下りて行った。
1年前から日本では、ベーシックインカム(BI)という制度が正式に導入され、日本国民全員に月10万円が支給されるようになっていた。
この制度の狙いは、最低限の生活を保障することで、「食べて行くための仕事」で無理に稼がなくてもよくなった人間が、もう1つ先のステップ…「例え収入がなくてもやりたい!」というくらい「本当にやりたい仕事」を見つけてもらう、というものだった。
大手企業ではAIが次々に導入され、単純作業や暗記・計算などは、もはやロボットの方が正確で速い時代。それぞれの個性を生かした「その人でなければダメな仕事」を見つけて行く必要があるのだ。
優斗が目的のカフェに到着すると、すでに9名の男女が着席して待っていた。
この会は「8・2の法則」ついての情報交換を目的として開かれた「8・2会」である。
例えば、同じ巣に住む働きアリのうち2割は、他のアリに仕事を任せて働かない、という統計がある。
どこの世界にも、2割は仕事をサボるヤツが出てくるのだ。
そして、面白いことに、この働かない2割を追い出しても、働き者の8割にいたはずのアリの中から、働かないアリがまた2割生まれる。
どんな場所にも必ず「8割の働き者」と「2割の怠け者」が存在する、というのが「8・2の法則」なのだ。
主催者の涼が、BI導入後に「前より働くことが楽しくなった人間」側から8人、「仕事をしなくなった人間」側から2人を、自分で立ち上げた「8・2」というサイトから人数限定で募集し、「8・2会」を開催したのだ。
「2」側からの参加者は優斗と、ずっと俯いている暗そうな女性の2人だ。
「8・2会」がスタートし、真ん中に座る涼の仕切りのもと、BI導入後に起きた自分や周りの変化を、10人が順番に話していく。
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