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「おはよう、文ちゃん」
カーテンの開く音と、聞きなじんだ声がした。
太陽が眩しくて眉を寄せる。
覚醒したばかりの体は、石をのせられたように重くて、もやりとした気持ち悪さに身じろぎすら億劫になった。
「気分はどう?」
「……悪い」
質問に答えた声は掠れてガサガサしている。
唾を飲み込むと喉が突き刺すように痛かった。
「ほら、だから飲み過ぎないように言っただろ。
昨日のこと覚えてる?」
背中を支えられて起き上がる。
コンタクトを外さないままで寝たからか、ピントの合わない視界には呆れたように眉を下げた夫の顔がぶれて回る。
「……さやかに怒られながらタクシーに乗ったとこまで」
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