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前編
あるところに、一人の内気な少女がいました。
彼女の名前は水谷恵理、まだ恋を知って間もない中学生です。
でも、その恋は片想い。彼女は想いを伝えるどころか、相手に話しかけることすらできませんでした。
彼女は神様に祈ります。どうか彼に振り向いてもらえますように、と。
しかし、神様はそんな一人の少女の願いを叶えられるほど暇じゃありません。毎日のように夜空へ向かって祈り続ける彼女を、神様はずっと無視しつづけました。
ある日のこと、恵理が一人、家路に続く田んぼ道を歩いていると、ふいに頭の上に何かが落ちてきます。幸い落ちてきたものは軽かったらしく、彼女は驚いた程度ですみました。
恵理は目をまんまるくさせて少しだけ痛かった頭をさすり、落ちたものを見つめました。それは小さなノート、A5版くらいの真っ黒なものです。不思議に思った彼女は空を見上げました。
そこにはただ青空が広がるたけ、周りにだって何一つ高い建物なんかありません。
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