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「本城、これ」
レッスンのあと秋島が、鶴のマークも鮮やかな白い封筒を、照れ臭そうにあたしに手渡した。
ああ。ついに来たか。
「何で秋島から? 弥生からもらいたかったな~あたし」
「俺じゃ悪いかよ。毎日会うんだから合理的だろ。
そんで一応さ、本城が、その……仲を取り持ったっちゅーかさ。
だから披露宴の友人代表挨拶も頼むわ」
自分で言って自分で照れている。
踊ってる時はあんだけ凛としてカッコいいのに、
つくづく可愛いヤツ。
あたしはダンススクールの講師をしている。
秋島は同僚の講師仲間で、ヤツの彼女はあたしの幼なじみ。親友の弥生だ。
そう、あたしはいわゆる『キューピッド』ってやつ。
「あたしに挨拶なんてさせたら、何言うかわかんないよ?」
「それは……覚悟の上だ!」
開き直ってふんぞり返る秋島に、思わず吹き出した。
「じゃ本城蘭子、謹んで出席させていただきます。
せいぜい腹くくっといてよ」
「おう。サンキュー」
早速、弥生に電話する。
「あ、弥生? 招待状ありがとう」
『あ、やっと渡したんだ。蘭ちゃん絶対来てね』
「あたしに挨拶しろって?
あることないことしゃべっちゃうよ~ん」
『うふふ。楽しみにしてる』
「他には誰呼んだの?」
『んーとね、蘭ちゃんが知ってるのは、高校のバスケ部の面々』
「げ。あいつら呼ぶの?」
『お式に呼ぶくらいの友達って、バスケ部の人くらいしかいないもん。
秋島くんがたくさん呼ぶから、私も呼ばないと釣り合い取れないし』
「……そっか」
弥生は身体が弱くて、小学校も中学校も休みがちだった。
高校時代はかなり丈夫になって欠席も減り、
自分では運動できないけど何かしたいって、
あたしの所属してたバスケット部のマネージャーをしてくれていた。
バスケ部は男女とも部員が少なくて、
試合の時は他部から人を借りてようやく出場し、
練習は男女一緒にやってるような有りさまの弱小部だったけど、
背が伸び過ぎたせいで中学までやってたクラシックバレエを断念し、高校でバスケを始めたあたしにとっては、
皆でひとつのボールを繋いでひとつのゴールを目指し、
あたしも背の高さで役立つことのできるバスケが、目新しくて楽しくて。
男女問わず仲が良いバスケ部は居心地も良くて、それなりに充実していた。
卒業して10年以上経った今でも、バスケ部の連中とはたまに連絡を取って飲んだりしている。
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