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弥生との通話を切ったあと、メールの着信に気づいた。
バスケ部仲間の明と、そして修司からも入ってる。
はは~ん。
メール画面を開くと、案の定。
【弥生ちゃん結婚するって!? いつのまに!?
どーなってんだよ、本城~!!】
【弥生ちゃん、結婚すんの!? 誰だよ秋島って、情報寄越せ!!
明日の金曜、8時にいつもの『魚丁』集合!!】
馬鹿な奴ら。もう遅い、っての。
翌日、特に仲の良かった明とあたしと修司は、
居酒屋で待ち合わせた。
あたし達三人は、実は『西高バスケ部のARASHI』と呼ばれていた。
……いや、呼んでたのは弥生だけだけど。
あの頃デビューしたアイドルグループの『ARASHI』に弥生は首ったけで、
バレエをやってたせいで振り付けを真似るだけなら初見でできたあたしは、
『ARASHI』の新曲が出るたび、覚えて踊って見せていた。
弥生が目をキラキラさせて、喜んでくれるのが嬉しくて。
あんまり弥生がARASHI、ARASHI言うもんだから、
あの頃弥生に気のあった明と修司も、振り付けを教えろと言って来て、一緒に踊り始めた。
『ほら、アキラ・ランコ・シュウジで『A・RA・SHI』だろ?』
『わぁ、ホントだー!!
西高バスケ部のARASHIだね、すごーい!!』
人の気も知らずに無邪気に喜ぶ弥生には、誰も敵わない。
あたし達三人は、それ以降リリースされたARASHIの曲の振り付けを、
高校卒業まで順次マスターする羽目に陥った。
『何でARASHIなんだよ?
もっとカッコ良いアイドル、山のようにいるじゃん。
なんか、ダサくねぇ? ARASHIって』
『そこがいいの!!
なんかね、変にカッコつけてなくて、ほんわかしてて。
歌は上手いでしょ!
ソロで聞いたらよくわかるよ、みんな上手いもん!』
うっとり語る弥生と、げんなり肩を落とす明と修司。
それでも、試合で勝てない弱小バスケ部の『ARASHI』は、
弥生の喜ぶ顔を見たくて、
せめて振り真似するくらいしかできなかったんだ、あの頃。
暖簾をくぐると、入ってすぐのカウンター席で、
すでに明と修司はいい感じに出来上がっていた。
「あ、来た来た本城、こっちこっち!!
オイどうなってんだよ、いきなり結婚って!」
比較的まだマトモな修司が手招きする。
「久しぶり。別にいきなりじゃないよ、もう2年のお付き合いだもん、弥生達は」
「え、俺の結婚より前からかよ!?」
「修司あんた、新婚のクセして、何動揺してんのさ」
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