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「それはそれ、これはこれだよ、我らが永遠のアイドル弥生ちゃんの一大事だかんな!」
「修司は卒業の時にきっちり振られてんだろ!
ずっと想いを温め続けた俺のこの純情を、どーしてくれんだ本城~」
明が、すでに座りかけた目であたしを睨む。
「人様の恋路にまで責任持てませ~ん!
ってか、嘘つけ明、あっちこっちとイロイロ手を出してたの、あたしは知ってるぞ!」
「……つかお前、秋島って奴知り合いなの?」
「ダンススクールの同僚だからさ。
キューピッドだよん、あたし」
「キューピッドって……つくづく友達甲斐のない奴だよ、お前は。
あ~ぁ、弥生ちゃん……」
明はカウンターに突っ伏して、早々に寝込んでしまった。
明は酒癖悪いからな、今日は修司に任せてとっとと退散しよう。
「どんな奴だよ、秋島って」
こっちもそろそろヤバそうな修司が、呂律の回らない口調で尋ねてきた。
「ちょっと頼りないけど、いい奴だよ。
ジャズダンスと、最近はハワイアンも担当。生徒のオバちゃん達にも可愛がられてる」
「ふーん。本城のお眼鏡にかなった奴なんだよな。
お前のガード、固かったからな~」
「なにそれ。あたしはあの頃、明はともかく修司ならいいかな、ってちょっと思ってたのに」
修司は笑った。
「へぇ?初耳!
あの頃に聞きたかったな、それ。
まあ俺はお前のガードを掻い潜って告って玉砕したけど、
でも明だってそれなりに本気だったよ。
おちゃらけてゴマかしてたけどな」
「え~明が? ホントかな」
「……お前はどうなんだよ。いいのか?」
「え? 何が?」
「いや、……まあいいけど」
「……ガードってんなら、拓ちゃんでしょ」
「拓ちゃん?」
「弥生のひとつ違いの弟の、拓巳」
「あぁ、あいつ相当なシスコンだったよな!」
「ほら、弥生が風邪を拗らせて入院した時、
見舞いに押し掛けて病室で踊ったじゃん」
「あぁやったやった!
個室だっていうから、ラジカセ持ち込んで!
あん時の拓巳、もうすんごい顔で睨んでたよな!
弥生ちゃんとお母さんにはバカウケしたのに」
「拓ちゃんはさ、小っちゃい頃から、
『姉ちゃんは俺が守る』
ってずっと言ってたからね。
実はあのあと、『ARASHI』のダンスすっごい練習してたんだよ」
「へぇ~」
明がむくり、と起き上がった。
「……秋島を呼べーっ!!」
「な、何だ急に」
「本城、秋島に電話しろ!
対決だ!!」
「何言ってんだよ明」
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