Dance.Dance? Dance!!

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わめく明をなだめているところで、スマホが鳴る。 「……げ。噂をすれば」 「誰? 弥生ちゃん?」 「いや、秋島」 苦笑いしながら電話に出る。 『あ、本城遅くにゴメン。明日の午後イチのレッスンだけどさ、』 「お前が秋島か!?」 目にも止まらぬ速さであたしのスマホをもぎ取り、 明が秋島に向けて高らかに宣言した。 「披露宴にはありがたくご招待されてやる! ただし余興で、『ARASHI』の新曲でダンス勝負だ!」 『……は? 本城…じゃないよな、どちら様?』 「明! ちょ、返してよ!」 「お前もダンスのプロなら、受けて立て!」 「ちょ、秋島ごめん! 明ってば!」 『……あきら?……あぁ! ……わかった、受けて立つよ。曲がりなりにも俺もプロだ。どっからでもどーぞ』 「よっしゃ! 西高バスケ部『ARASHI』の名にかけて、お前には負けん!!」 「……まったく、勝負してどーしようってのよ、明」 秋島にはあのあと、あたしが平謝りして電話を終え、 居酒屋も早々に引き上げて、三人で酔い醒ましに夜更けの道を歩く。 「弥生ちゃんに、俺達のカッコいいとこ見せたいじゃん。 今でもずっと『ARASHI』ファンだろ、弥生ちゃん」 「秋島のカッコ良さを際立たせるだけだよ、ダンス講師ナメてない?アンタ」 「そこはほら、『西高ARASHI』のリーダー本城蘭子様のお力添えで……」 「ばーか! 本職相手に付け焼き刃じゃ、どうにもなりませ~ん」 「冷てーなぁ。まあ勝てなくてもさ、余興にちょうど良くない?『ARASHI』の新曲、結婚お祝いソングだし。 ……俺、踊りたい」 「……」 それまで黙っていた修司が、口を開いた。 「五人で完コピ、ってどうよ。拓巳と、そいつにも入ってもらってさ。 振り付けとか立ち位置、新郎メインにちょっとアレンジして」 「え、秋島を入れるの?」 「そう。式まで2ヶ月ある。それまでそいつと本城の本職二人に教えてもらってさ、一緒に練習する」 「何考えてんのさ修司。酔ってる?」 「酔ってるけど、素面だよ。 ま、秋島って奴の人となりをじっくり拝ませてもらいたい訳さ、2ヶ月間」 「あ、賛成賛成! そういうことなら俺、対決でなくていいや」 そうか、拓ちゃんに秋島を加えて、西高のARASHI復活。 弥生にも内緒で、式当日のサプライズにして。 いいかもしれない。 あたし達それぞれのあの頃の気持ちを、 今の気持ちを、 昇華するためにも。
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