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翌日、あたしが恐る恐る持ち掛けた提案に、
秋島は二つ返事で頷いた。
拓ちゃんは即決で断るかと思いきや、意外にも大乗り気。
スムーズ過ぎて、何かウラがありそうな気がして仕方なかったけど、
まずはお約束の、居酒屋での結成集会。
「申し訳ないけどさ秋島、今日はちょっと覚悟してよ。
あいつら手薬煉引いて待ってるから。
あたしもできるだけ取りなすけど」
「『西高のARASHI』のことは、弥生からしょっちゅう聞いてる。
気弱になった時、いつもいつもすごく励まされた、って。
いくら感謝してもし足りない、って。
だから俺も今日は覚悟決めて来た。助け船は一切ノーサンキューな」
二人でダンススクールから居酒屋へ向かう途中、秋島はそう言った。
酔いに任せて絡みまくる明と修司と拓ちゃんを、避けることもせず真正面から受け入れて、
言葉通り、秋島は30分で潰されて撃沈した。
ま、あとの三人も相当酩酊状態になるまで、そのあと飲んでたけど。
ともかくこれを皮切りに、2ヶ月の特訓は開始された。
挙式前のカップルは、ただでさえ様々な雑事てんこ盛りなのに、
その上、弥生に内緒だったから、
秋島はごく限られた時間しか練習のために確保できない。
だから、細かい振り付けチェックと指導は、あたしがする。
秋島の空き時間に皆のスケジュールを合わせ、フォーメーションと通しでの練習をする。
個人の絡みがある振り付けは、なるべく秋島とあたしが分担して、仕事の合間に二人で合わせる。
初めて五人で通し練習をした日、
明と修司は秋島のダンスを見て唖然としていた。
「天と地、だな……」
「なに、その切れ味」
「お見それしました」
秋島は照れながら汗を拭う。
「いや、三人ともすごく上手いよ。
この曲、振り付けが単純だからその分、カッコ良く見せるのは難しいのに、
三人とも見せ方心得てるもん。
思ったよりずっと基礎が出来てて、俺こそ驚いた。
弥生が絶賛してただけはあるよ」
「……なんか素直に喜べんな、その誉めかた。
特に、しゃらっと『弥生』とか呼び捨てるとこが」
「ははは明、悔しけりゃ秋島よりキレるダンスしなよ」
「本城お前、俺達の味方じゃないのか。
お前の一番弟子だぞ、俺達は」
「あたしは中立!
不干渉を貫かせていただきますよん」
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