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式は親族だけで挙げるということで、
あたし達の出番は披露宴から。
ホテルの会場は、当然下見済みだ。雛壇の反対側に、けっこう広いステージをしつらえてもらっている。
新婦の友人席に着くと、
明、修司、あたし。
会場の招待客の視線が痛い。異様な空気が漂ってる。
三人とも、服装同じだから!!
それもこれも、余興までに着替える時間がないから!
まったく!
明がボソッと呟く。
「本城……お前カッコいいよ、俺、負けた……」
「誰のせいだ、誰の!!」
『お待たせしました、新郎新婦のご入場です!』
進行の司会者とも、入念な打ち合わせ済み。
歓談開始後の比較的早い段階、最初のお色直しの前に、サプライズARASHIが登場予定だ。
ホントは余興のトリが良かったんだけど、
明と秋島が、時間帯が遅くなるとへべれけになっちゃってマトモに踊れない、って泣きつくからさ……。
明はともかく、主役の新郎がヘロヘロしてちゃ、決まるモンも決まんないじゃん。
おかげであたしは、披露宴の最初っから宝塚ばりのスーツ姿で、バリバリ好奇の視線の的だよ、どーしてくれる!!
新婦の控え室にお邪魔するのも我慢したんだよ、バレバレになるもん……。
余興のアレコレを考えていると、会場が暗転し、定番の結婚マーチが鳴り響いた。
派手なスポットライトが当たって、扉が左右に開く。
白無垢の弥生。
……綺麗だよ。
紋付き袴の秋島。
……アンタ、つい今しがたまで泣いてたろ、なにその真っ赤な目!!
その紋付き袴姿で踊ってもらうんだけど!
友人代表挨拶は、さすがにこの格好では勘弁して欲しくて、
余興の最後に回してもらった。
挨拶が、滞りなく流れて、宴席が始まる。
あ~コラ! 明の奴め、そんなにガバガバ飲むんじゃない、っちゅーのに!
秋島、アンタもちっとは断りなさいよ、お酌全部受けてないでさぁ……。
まったく。
大丈夫かな、サプライズARASHI……。
白無垢の顔を上げて、時々弥生がこっちを見てる。
さすがにもう……わかってるよね、弥生。
『さてここで、新婦様へのサプライズ・プレゼントを用意いたしております。
なんと、新郎様率いる『サプライズARASHI』の登場です!』
来た!!
来たよ、この時が。
いよいよだ!
席を立ち、ステージに向かって歩く。
まだ暗いステージに、
秋島を中央に、左右に明と修司、端にあたしと拓ちゃんが、静かに立ち並んだ。
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