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みんなでつくるドラマ脚本プロジェクト応募作品
目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。どこからか転げ落ちた拍子に目が覚めたのである。辺りは暗く、星空だった。ここがどこの建物なのか、自分がなぜここにいるのか、当初、山脇弘三にはさっぱり検討もつかなかった。必死で記憶の糸をたぐりよせ、ようやく理解していった。要するにここは最近、引っ越してきた雑居ビルの屋外階段なのだ。夜遅く疲弊して外回りから帰ってきた山脇はすぐに眠りこけたが、しばらくして眠気まなこでトイレに行った。トイレから出たあと、寝ぼけていて、そこを以前住んでいた一軒屋と勘違いしてしまったのだ。以前の家の構造では、トイレを出てから寝室に戻るには、まずトイレのドアを開け、洗面などがある短い通路を左に進むと廊下に出る。その廊下を左側に進んで、突き当たりのドアを開けるとそこが寝室という順路だった。今のワンルームの部屋で同じようにすすむと、トイレのドアを開けた左側にあるのは玄関のドアであり、そこを出たところは雑居ビルの共用廊下である。さらに左側にまっすぐ進むと突き当たりにあるのは屋外階段に出る扉なのである。山脇はそこを寝室と思い込み、寝てしまった。しばらくして寝返りをうった時、、あやまってひとつ下側の踊り場まで転げ落ちてしまったというわけである。
山脇は思った。
「これほどの推理力があるのに、何で探偵の仕事の依頼はなかなか受けられないんだろうな」
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