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――スマホが鳴った。
裕史はおそるおそるスマホの画面を操作し、電話に出た。
『健一くんのこと知ってるか。お前が殺した名だよ』
心の臓が、早鐘のように打ち鳴らされる。
『護衛は倒した。暗闇にして、襲撃犯のような音声を流したら勝手に戦闘してくれて助かったよ。実は録音された銃声だと気づかずにな。で、外に逃げたかのように音声を流したらこれも引っ掛かってくれた。もちろん、残ったのもいたが、オレの敵じゃないな。ぞうきんで転がしてやった』
「な、何を言って」
『下に来てみろよ』
裕史のごくっ、唾を飲み込んだ。
こいつ、何を言っている。
まるで、大勢いた手下どもが、全部やられたかのように言った。全部、どうにかしてやったというかのような……裕史はおそるおそるドアを開けて、階段を下りて一階へ。
窓ガラスは割れて、庭にあるプールがのぞける。
芝生には倒れてる護衛が数名、室内にも倒れてるのが数名。どいつもこいつも、トラップらしいもので倒されたようだ。古典的なぞうきんですべらせるものから、多種多様にある。
「……お前、何者だよ」
『貴様を裁きに来た、といえばかっこいいが。なーに、しがない探偵だよ。自首をすすめにきた』
裕史は意識がどこかへ吹っ飛びそうだった。
絶対にバレることはないと思っていたひき逃げ事件。それが、どういうルートから分からないが発覚してしまい、そして、こうやって追い詰められている。
漫画やドラマのワンシーンのようだ。自分が悪役で、この電話の主は言うなら正義のヒーローか。
「い、いやだ」
あまりにも、みじめ。
このとき、彼のクチから出た言葉は紛れもなく本心だった。あまりにもみじめで、情けなくて、どうしようもないと自分で思いながら、だからこそ出てきた本音だった。地獄に堕ちた方がいいと感じながらも、彼は言った。刑務所なんかに入りたくない、と。どうしようもない本心が出たからこそ、出てきてしまった己の正体。
『別にお前を責めるつもりはないよ。人間だけじゃなく、動物にだってそういう奴はいる。分かっていながらも、大きな罪だからこそ許容できない。それを認めたら、罪悪感に蝕まれて死んでしまうと知っているから。……そういう奴はいくらも見てきた。だからこそ、言うぜ。お前の気持ちを分かった上で言うぜ』
てめーが泣かした奴等のこと考えろ。
「う、うわああああああああああああっ!」
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