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というと、彼は店内へと移動し、いつもの席に乗っかって、丸まって眠ろうと目を閉じる。
「おいおい、店は開いてないのによ。なぁ、お前結局、何で探偵なんかやってんだ」
『……昔、古い映画を見せられてな』
といっても、あの頃は能力が芽生える前で映画をしっかりを見たわけじゃない。だが、探偵の生き方は、どこかでしっかりと伝わっていたようだ。
『おばあちゃん、昔の映画が好きでなぁ。ハンフリー・ボガートの映画がとくに好きでよ。……皮肉だな。自由を求めて抜け出したのに。その結果、あの人が好きな姿になろうとしてる』
「実はな、お前のこと、たまにだがそのおばあちゃんに話してる」
!?
と、途端にわんこ探偵は起き上がる。
『それ、おまっ、ど、どういう』
「いや、うちでたまに現れるってことをな。さすがにお前が探偵をしてることは言ってないけどよ。でも、無事だってことは伝えてるから安心しろ。……たまにでいいから、顔見せてやれよ」
『ふ、ふん。オレなんかいなくても、別の犬がいるんだよ』
「子犬に何を嫉妬してんだよ」
『うるせーよ』
ふてくされた、わんこ探偵はそのまま席で丸まり、眠りについた。
夜になったら、また仕事だ。
今夜もまた、誰かの涙を晴らしに現れる。
了
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