新たなる旅立ち

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「…へっ、こんな姿…誰にも見せられねぇな…」 時は遡り、傷だらけのウサギさん。 組の威厳を保つ為に破門され、独りぼっちで町を歩いています。 「アイツだろ…?」 「間違いねぇ…「亀に負けたウサギ」だろ?」 「……ふん。」 今までのツケがこんなに響くとは思いもしなかったでしょう… 皆がそれぞれウサギさんに指を指して笑いものにしています。 「くだらねぇ…クソ共が…!」 力無く呟く…その先に町中を流れる川。 居場所を求めるように川原に腰掛けたウサギさん。 「ふぅ…へっ、独りになっちまったな…」 強がりはむなしく風の音に掻き消され、弱りきった精神にさらに孤独を与える。 「アンっ!アンっ!」 「…何だお前…?」 「拾って下さい。」 そう書かれた箱にその意味もわからず元気に鳴く仔犬が一匹。 「…お前も…独りか。」 「クゥーン…」 「痛っ、あぁ…クソ…体痛え…」 すり寄る仔犬さん。 話し掛けてくれているウサギさんに嬉しさのあまり、かまって欲しくて仕方が無いようです。 「お前…腹減ってるのか…?」 「アンっ!」 「何にもねぇよ…すまねぇな。」 「アンっ!」 言葉は通じていなかったようですが、一緒にいられるだけで。 それだけで良いと…お互いが思い合っている事は間違いないようです。 「俺は…変わるぜ。…義理と人情が…人を形成するんだ…親分は教えてくれなかったが…必死こいて教えてくれたバカ野郎を見ちまったからな。」 「アンっ!」 「へへっ、お前に言ってもわかんねぇよな。俺はどうかしちまったみてぇだな…」 優しく頭を撫でるウサギさんはレースの前では考えられない程優しい顔をしています。 「しかし…姫…見つからねぇな。どこにいんだよ…月の連中への言い訳考えねぇとな…うわ!」 ウサギさんの胸に飛び込む仔犬さん。 「…お前…ん?…これは…」 ボロボロの鞄から出てきた物。 小さな丸薬だった。 「…お前にもこれやるよ…人間の社会で生きていくんなら「言葉」は必要だ。」 口を開けた隙に薬を仔犬さんに飲ませるウサギさん。 大きくブルッと震える仔犬さん。 「アンっ…あ…う…」 「その内慣れてくるさ。俺みたいに汚ぇ言葉は覚えるなよ?丁寧な言葉を身につけろ。」 「か…う…」 「こんな所に居やがったか!」 「やべっ!じゃあな!優しい奴に拾って貰えよ!お前は必ず幸せになれよ!」 「あ、あ…」 「ウサギの野郎、あっちに走っていったッス!」 「兄貴!川の向こうはウチらのシマじゃないッス!」 「どうしましょう!」 「ちっ!行くぞ!酒でも飲んでストレス発散しようぜ!」 「あざーッス!!」 どうやらウサギさんはうまく逃げられたようです。 「……ッス!あッス!あッス!」 仔犬さんは決して届かない未熟な言葉を川の向こうへ叫び続けたそうな。
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